CVR約3倍。購入前の「迷い」を会話から捉え、商品・顧客体験の改善へ——ZENBがOmakase AIで進める顧客起点のEC

ミツカングループが2019年に立ち上げた食のブランド「ZENB」。植物が持つおいしさや栄養を引き出し、黄えんどう豆を使ったヌードルやブレッドをはじめ、ドーナツ、スナック、スープなど幅広い商品を展開しています。

ZENBが大切にするのは「顧客起点」の考え方です。アンケートやインタビュー、お客様からの問い合わせ内容、サイト上の行動データなどからお客様を理解し、商品やサービス、サイト、広告LPなどの改善につなげてきました。

一方で、アクセス解析から「どこで離脱したか」は分かっても、「なぜ購入しなかったのか」「何に迷っていたのか」までは分からないという課題がありました。

そこで導入したのが、マルチモーダルAIエージェント「Omakase AI」です。

現在では公式サイトの主要ページで活用し、お客様との会話から得られた気づきを、Omakase AI上のコミュニケーション改善にとどめず、商品セットや購入体験、日々のコミュニケーションの改善にまで反映しています。

導入の背景や成果、そしてOmakase AIを通じて見えてきた新たな顧客理解について、マーケティング&ダイレクト本部 ダイレクト部の御手洗氏、小畠氏にお話を伺いました。

「行動」は見えても、その背景にある「理由」が分からなかった

——まず、ZENBがお客様とのコミュニケーションで大切にしていることを教えてください。

御手洗氏:
ZENBでは「顧客起点」という考え方を大切にしています。

アンケートやインタビュー、お問い合わせ、レビューに加えて、サイト上の行動データなど、定性・定量の両面からお客様を理解するようにしています。

「なぜZENBを選んでいただけたのか」「どんな不安があるのか」「なぜ使い続けていただけているのか」といったことを捉えて、商品開発やサイト、広告LP、同梱物など、さまざまな改善につなげています。

私たちが伝えたいことを一方的に伝えるのではなく、お客様にとって何が嬉しいのか、どんな場面で価値を感じていただいているのかを理解したうえで伝えることを大切にしています。

——その中で、Omakase AI導入前にはどのような課題がありましたか?

御手洗氏:
アクセス解析などを使えば、どのページで離脱しているかという「行動」は把握できます。

ただ、なぜそこで離脱したのか、購入するときに何を不安に感じたのか、どんな情報が足りなかったのかという背景までは分からないことが課題でした。

そこが分からないまま改善しようとすると、どうしても想像の域を出ず、仮説の精度も上がりにくくなります。

サイト上にアンケートを設置したこともありましたが、回答してくださるのは比較的熱量の高い方が中心です。本当に知りたいのは、「サイトには来てくださったけれど、購入には至らなかった方」が何を感じていたのか。そこを捉えることに難しさを感じていました。

もう一つ感じていたのが、お客様のニーズの多様化です。

同じお客様でも、朝と夜では求める情報が違うかもしれませんし、商品について気になるポイントも人それぞれです。それらすべてに一つのページだけで答えるのは難しい。

一人ひとりがその瞬間に知りたいことに答える方法が必要だと感じていました。


きっかけは、アドテックで偶然目にしたOmakase AI

——Omakase AIを知っていただいたきっかけは何だったのでしょうか?

御手洗氏:
最初のきっかけはアドテック東京(広告・マーケティング関連の展示会)でした。

会場を歩いていたときに、たまたまジールスさんのセッションを聞いたんです。端的に説明するのが難しいサービスを取り扱う企業様による、Omakase AIを活用している事例が紹介されていました。

話を聞きながら、「お客様とAIが会話すれば、何が分からないのかまで分かるということか」と。

ちょうど自分たちが抱えていた課題とピタッと重なって、「これは使えるのではないか」と思ったのが始まりでした。

——導入時には、どのようなことを期待されていましたか?

御手洗氏:
大きく3つありました。

一つ目は、お客様との会話を通じて、購入時に何を知りたいのかを理解すること。その学びを広告LPやサイト、CRMなどにも反映し、顧客体験やCVRの向上につなげることです。

二つ目は、購入時の期待や継続しているお客様が感じている価値を理解し、継続率やLTVの向上につなげること。

三つ目は、お客様自身で疑問を解決できるようにすることで、顧客体験を良くしながら、問い合わせ対応の負荷やコストも減らしていくことでした。

約3割が「商品理解・比較検討」。会話から見えた、購入前のリアルな疑問

——現在はどのようにOmakase AIを活用されていますか?

小畠氏:
トップページや商品紹介ページなど、ZENBの公式ECサイト(https://zenb.jp/)の主要なページに設置しています。

初めてサイトを訪れた方から定期購入中のお客様まで、幅広い方に利用していただけるよう設計しています。

現在は特に、初めて訪問された方にZENBへ興味を持っていただき、定期購入につなげていくことを一つの目標にしています。

Omakase AIの運用方針を決めるきっかけは、導入して1カ月ほど経ったタイミングで、実際の会話ログをカテゴリー別に整理したことです。

結果としてOmakase AIにに寄せられた会話の約3割が商品理解や比較検討に関する会話だったんです。同時にZENBについて何も知らないというより、ある程度ブランドを理解したうえで、“その先を知るため”にOmakase AIを使っていることも見えてきました。

 

「ZENBの商品についてもっと知りたい」「このセットとこのセットは何が違うのか」といった購入検討・比較段階の質問が多かったので、その点を答えられるようにナレッジを蓄積していきました。

会話データを、Omakase AIの改善だけで終わらせない。顧客起点で商品そのものも変えていく

また当社では得られた会話データを、Omakase AI上のコミュニケーション改善だけでなく、ZENBの商品やサービスそのものの改善にも活用しています。

お客様の声を起点に、商品やサービス、コミュニケーションをより良くしていく。ZENBが大切にする**「顧客起点」**の考え方が、Omakase AIから得られる会話データの活用にも表れています。

——実際に、会話から新しい施策につながった例はありますか?

御手洗氏:
いくつかあります。

例えば、会話ログを見ると、「ブレッドとヌードルのどちらにするか迷っている」「両方試してみたい」といった声が見えてきました。

そこで、両方を一度に試せる商品にニーズがあると考え、以前販売していたセットを再び展開しました。

また、ゼンブブレッドは賞味期限が比較的長いため、「保存料がたくさん入っているのではないか」と不安に感じているお客様がいることも分かりました。

こうした声を把握することで、お客様が疑問に感じていることや、十分に伝えられていない情報を見直すきっかけになっています。

Omakase AIの回答だけを変えるのではなく、お客様とのコミュニケーション全体を見直すための材料として活用しています。

さらに、ゼンブブレッドの定期初回セットの仕組みも改善しました。

当時、決められたセットから選んで購入する仕組みでしたが、お客様との会話から、アレルギーなどを理由に「一部のフレーバーを変更できないと購入しづらい」と感じている方がいることが分かりました。

そこで、初回からフレーバーを自由に変更できる仕組みを導入しました。

また、「定期購入は一度始めると続けなければならないのでは」と不安に感じている方がいることも分かりました。

ZENBの定期便は、お届けする商品やタイミングを柔軟に変更できる仕組みですが、私たちにとっては当たり前だったその特徴が、お客様には十分に伝わっていなかったのです。

こうした会話のデータを通じて、商品やサービスの改善点だけでなく、私たちが当たり前だと思っていたことの中にも、お客様にきちんと伝えるべき価値があると気づくことができました。

お客様の小さな疑問や迷いを捉え、それを商品やサービスの改善にまでつなげていく。Omakase AIは、ZENBが大切にする顧客起点の取り組みを実践するための、新たな顧客接点の一つになっています。

 

アンケートでは拾えなかった「ちょっと気になる」を捉えられる

——導入後、お客様とのコミュニケーションにはどのような変化を感じていますか?

小畠氏:
意外な点かもしれませんが、お客様の「温度感」を、直接感じることができます。

 

Omakase AIの場合は、サイトを見ながら「ちょっとここが気になる」という感覚で、気軽に話しかけていただけます。

そういった方々が実際にどんなことを気にしているのかを知れるのは大きいですね。

もう一つ面白いのが、AIだからこそ聞きやすいことがあるということです。

例えば「定期購入って1回だけで解約してもいいんですか?」という質問は、わざわざ人がいる問い合わせ窓口には少し聞きにくいですよね。

でもAIには聞ける。

人には少し聞きづらい疑問も含めて、お客様が気軽に相談できることは、実際に使ってみて感じたAIならではの価値です。

月約1,500件の会話。Omakase AI内の定期CVRは導入時から約3倍に

利用が進む中で、定量面でも変化が見えてきました。

小畠氏:
最初は、そもそもお客様に使っていただけるのか少し不安でした。

ですが月に約1500件以上の会話が発生していて、平均すると一つの会話で5ターン程度やり取りされています。

想像していた以上に使っていただけていると感じました。

また、Omakase AI経由で追っている定期購入については、導入時と比べてCVRが約3倍になっています。

もちろん外部環境の変化などもあるので、すべてがAIだけによるものとは考えていません。

ただ、AIとの会話を経て商品を購入していただけているということ自体が、一つの発見でした。AIを通じて商品を買うという体験が、少しずつ自然なものになってきているのではないかと感じています。

会話の最後に、お客様から「ありがとうございます」「助かりました」といった言葉をいただくこともあります。

単なるQ&Aではなく、一つのコミュニケーション体験として使っていただけている。それを実際の会話から感じられることも、日々運用する中での手応えにつながっています。

「ツール」だけではなく、一緒に改善するパートナーとして

——ジールスとの運用は、どのように進めていますか?

小畠氏:
月に一度程度の定例に加えて、チャットでもこまめにやり取りしています。

担当の方は、すごく熱量が高くとてもありがたいです。

単純に「この数字を上げましょう」という数値だけのやり取りではなく、ZENBについて理解したうえで、いろいろな角度から提案していただけるので、安心感があります。

単にOmakase AIを導入するだけではなく、ZENBとジールスが一緒に会話を分析し、改善を重ねていく。

その積み重ねが、顧客理解を深め、新しい施策につなげるための重要な要素になっています。

一人ひとりに合わせた提案から、その場での「解決」まで

——今後、お客様とのコミュニケーションをどのように進化させていきたいですか?

御手洗氏:
お客様によって、求めているものはかなり違います。

アレルギーを気にされる方もいれば、糖質、たんぱく質、カロリー、塩分など、気になる栄養素もそれぞれ違います。

将来的には会話を通じてお客様一人ひとりが大切にしていることを理解し、その方に合った商品や季節に合わせた食べ方などを提案できるようにしていきたいと考えています。

もう一つは、会話で疑問を解決して終わりではなく、その後のアクションまで同じ画面上で完結することです。

お客様の中には、サイト上の操作そのものに難しさを感じる方もいます。

相談して、そのまま必要な手続きまでできる。そこまで実現できれば、より良い顧客体験につながると思っています。

ZENBが大切にしてきた「顧客起点」。

Omakase AIの導入によって、これまでアクセス解析やアンケートだけでは捉えきれなかった、購入前のお客様の小さな疑問や迷いが「会話」として見えるようになりました。

そして、その声をOmakase AI上のコミュニケーション改善だけに閉じず、商品セットや購入方法、情報発信そのものの改善につなげていく。

Omakase AIは、単に購入を後押しするためのツールにとどまらず、お客様を理解し、次の顧客体験をつくるためのマルチモーダルAIエージェントとして、活用の幅を広げています。