オンライン接客でできること・できないこと
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自宅から簡単に店舗スタッフと繋ぐことができる「オンライン接客」。新型コロナウイルスが流行してから急速に拡大し続けるオンライン接客ですが、今後どのように変化していくのでしょうか。オンライン接客だからこそできること、また成功ポイントを事例とともにご紹介します。
目次
オンライン接客とは
オンライン接客とはインターネットやウェブなど、IT技術の発達によってオンライン上でも実店舗のような接客ができるサービスのこと。お客様の疑問や不安をその場で解消できるだけでなく、オンライン接客ならではの新たな価値が見直されており、オンライン接客を導入する企業が増えています。
オンライン接客で生まれる新たな価値
①顧客ごとのコンテンツ配信で購買率の向上
オンライン接客は、WEBサイト訪問者の行動履歴や購買履歴などを可視化できるため、これに基づき分析し、適切なコンテンツを配信できます。例えば、ユーザーごとのポップアップ型のクーポンを発行したり、キャンペーンを表示したりすることによって、商品の購買意欲を促進し、購入率の向上が期待できます。
②場所を選ばなくて良い
これまで、店舗スタッフも顧客も、実店舗にいなければ接客することも、受けることも難しかったですが、オンライン接客では場所を問いません。インターネット環境さえあれば、家などから気軽に繋げることが出来るため、交通費もかからないというメリットがあります。また、顔を写さなくて良いオンライン接客であれば、お化粧や着替える準備もしなくて良いため、さらに気軽さが増します。
③適切な担当者との結びつけ
その商品に詳しい担当者と結びつけることができることは、オンライン接客の最大のメリットとも言えるかもしれません。今まで、その店舗にしかいなかったスタッフや、日にちなどを確認しなくとも、オンライン接客の予約によって顧客の需要と供給が簡単に結びつけることが出来るようになりました。
④オンライン接客だからこその需要
オンラインでの接客の需要は様々なところにあります。例えば、以下のような顧客には、リアルの接客よりもオンライン接客を望む声も多いのです。
・外出自粛、外出を控えている方
・遠方にお住まいの方
・妊娠中や、小さいお子様がいる方
・お一人で外出が難しい方
・運転免許を返納されて外出手段がない方
⑤多様な働き方
オンライン接客の価値提供は、顧客だけではありません。従業員の多様な働き方も可能にします。出勤せずとも自宅や出張先から対応することが可能になり、場所を選ばず接客ができる顧客との新しい繋がりは、従業員のモチベーションにもなっています。
オンライン接客の種類
オンライン接客は、大きく分けて2種類。「有人チャット」と、「ビデオ接客」です。業種や目的によって使い分けるのが有効です。
①有人チャット
オンライン接客の中でも比較的取り入れやすいのが、「有人チャット」。電話やメールでの問い合わせよりも、場所を問わず、かつスピーディーにお客様の相談を解決できる手段として有効とされています。
有人チャットの事例:ナノ・ユニバース(アパレルブランド)
出典:https://store.nanouniverse.jp/jp/cs/cs-top.aspx
大手アパレルブランドの「ナノ・ユニバース」は、自社のEC内で、ビューティーアドバイザー(BA)による有人チャットを導入しています(実施期間未定)。外出を制限している方でも、BAに相談、質問しながらオンライン上で気軽に買い物出来る体験を提供しています。
②ビデオ接客
ZOOMなどを代表としたWEB会議システム、もしくはインスタLIVEなどのSNSを利用し、よりリアルに接客体験を可能とした手段が「ビデオ接客」です。アフターコロナと呼ばれる今の時代、「外出を控えているが店員と直接話して接客を受けたい」と言う顧客に対しても有効です。
ビデオ通話によるオンライン接客とはZoomなどのWeb会議ツールやビデオチャットを用いて接客する方法です。実際に実店舗で働いていたショップの店員や窓口を担当する従業員が直接顧客やユーザーとビデオ通話でコミュニケーションする方法であり、対面に近いやりとりが可能となります。実店舗や窓口でしっかりと話を聞きたい顧客やユーザーに効果的です。
ビデオ接客の事例:LIXIL(注文住宅業界)
出典:https://www.lixil.co.jp/showroom/online_customer_service/
LIXILでは、ZOOMを使ったビデオ接客を導入し、自宅にいながらショールームコーディネーターの方に相談できるという接客体験を実現しています。小さいお子様がいる方、ショールームが近くにない方、また家で寸法を測りながら接客を受けられるということで、オフライン(実店舗)の接客以上の体験も可能です。
オンライン接客でできること
①双方のコミュニケーション
オンライン接客でできることの中でも、一番のメリットといっても過言ではないのが、「双方のコミュニケーション」。メールマガジンや、お問い合わせ機能など、一方からのコミュニケーションを取るものはありましたが、オンライン接客を通して双方のコミュニケーションを取ることが可能になりました。
②リアルタイムな接客
オンライン接客では、「リアルタイム」にお客様の声を聴くことができるので、お客様が“今まさに求めていること”をその場で解決することによって、疑問や不安を解消しやすくなります。
③表情・音声を伝える
こちらはビデオ接客に限定したことですが、スタッフと顧客双方の「表情」「音声」を伝えることが出来るため、より正確に、スムーズに情報を伝えることができます。また、表情の使い分けで好印象を与えることもできるため、“おもてなし”接客をするのに有効です。
④本人確認
今はまだ浸透してませんが、今後は銀行手続き、賃貸契約の見積りなど、今まで対面でしかできなかった「本人確認」も、オンライン接客を通してできることの1つとされています。
⑤画面共有
これまで大量に用意しなければならなかった資料も、画像送信、画面共有によって、スムーズな対応が可能になりました。
オンライン接客成功法のコツ
①オンライン接客導入目的を明確にし、組織体制を整える
必ずしも全ての企業においてオンライン接客が必要ではありません。オンライン接客は、よりリアルな接客へと近づいていますが、一方で、顧客からの問合せ、従業員のアサイン、オンライン接客スキルの教育、オペレーション化などが必要となってきます。そのためには組織体制から整える必要があります。
②気軽さを生む(シームレスに)
実店舗へ来店する時は、必ずしも何か目的がある訳でもなく、買うものも決まっていない、などとフラッと立ち寄りたいだけの場合もあります。オンライン接客へ、どうシームレスに繋げていくのかが成功のポイントとなり、課題でもあるでしょう。
事例:チャットボット+有人チャット+ビデオ接客
Zeals(ジールス)は、チャットボット(自動応答機能)のノウハウを活かし、チャットボット、有人チャット、ビデオ接客という流れをシームレスに組み合わせた「接客DX」というオンライン接客を実現。相談はしたいが、ビデオ接客へはなかなか踏み切れないという顧客の悩みに応じ、まずチャットボットで気軽に対応可能としたことで、ビデオ接客へスムーズに導くことに成功しました。
③応対スピード
チャット対応がある場合、スピーディーで、且つ親密なコミュニケーションスキルが求められます。リアルタイムで進行するチャットでは、従来のような長文で丁寧な言葉が並ぶビジネスメールのようなやり取りは通用しないかもしれません。
④オンライン接客スキルのノウハウを貯める
どのページから、どのような問合せが来たか、オンライン接客後にユーザーがどのような行動をしたかなど、データを蓄積し、サービスの改善を進めることが、成功の鍵となります。中には、ITリテラシーが低い方もいらっしゃるかもしれません。そんな時は、事前に顧客の情報を受け取り、一方的に進めない接客スキルが求められます。
オンライン接客のノウハウが貯まりオペレーション化できれば、複数のスタッフが対応する中でもサービスの質を上げることができるでしょう。
⑤現物を見れるようにする工夫
化粧品、アクセサリー、アパレル商品など、実際に現物を見て・触れて・試したいものもあることは事実です。実際に、お客様が希望する商品を事前に送り返品期間を設ける、オンライン接客後にスタッフが家を尋ねるなど、工夫している企業があります。
接客はオンラインの時代へと変化
顧客のニーズを汲み取る
これまで、「オフライン(実店舗)」と「オンライン販売(ECサイト)」の選択は完全に顧客に任され、好みに合わせられるようどちらの場も作っているのが主流でした。コロナ禍において、しかし、オンライン販売はあくまで手段の1つに過ぎません。コロナ禍、アフターコロナと言われる時代は、オフラインでの接客をオンラインで実現する「オンライン接客」において顧客のニーズを汲み取り、商品を提案することが重要となってきます。
例えば服のコーディネートや金融商品を選ぶ時など、試したり直接話を聞いたりしなければ購入の判断が難しい商品に関しては、プロフェッショナルからのアドバイスへの需要がとても高くなっています。リアルタイムでアドバイスができ、顧客のニーズを汲み取ることが出来る「オンライン接客」の重要性はますます加速しているのです。
価値ある“おもてなし”をオンライン接客で実現する
日本は世界に誇る「おもてなし」文化です。目に見えない気配りや心配りをすることで、顧客の満足度を高めることができ、さらにそれは売上にも繋がります。これまで、「おもてなし」をするのには、オフライン(実店舗)での接客が当たり前でしたが、コロナウイルス感染拡大により、店舗封鎖や外出自粛の傾向が強くなり、“おもてなし”をする機会が減ってしまいました。
このコロナ禍において、価値ある“おもてなし”を復活させるには、非接触ながらに対面する「オンライン接客」をいかに攻略するかが鍵となります。オンライン接客をリアルに近づけ、“おもてなし”を実現できるかで顧客の満足度にも繋がるのです。
多くの業種でオンライン接客が活用できる
オンライン接客は、すでに様々な場面で活用されています。例えば学習塾や英会話レッスン。有名講師の授業が映像(オンライン)で受けられたり、日本にいながら海外に住む講師とレッスンを行えるサービスとして、コロナ以前から活用されていました。
他にも、ジムやヨガなどの講師指導や、商品の操作説明、家具や服のコーディネートの提案、本人確認の場としてなど、多くの業種で「オンライン接客」の可能性が見出せます。
インターネットの接続環境
オンライン接客のデメリットとして、しばしばインターネットの接続環境が挙げられます。今でも一般的な通信環境であれば問題ないレベルで利用できますが、通信環境によっては途切れてしまったり、映像が不鮮明になってしまったりすることもあります。
しかし、今後5Gと呼ばれる第5世代移動通信システムが普及すると、これまで以上の高速大容量通信が可能になり、遅延を極小にして即答に繋げることが出来るとされています。そのため今言われている通信環境のデメリットも近い将来、ほとんどなくなるでしょう。
まとめ
オフラインでの接客以上の価値を生むとも言われているオンライン接客。新たな価値を生み出すためには、単に新しいツールを導入するだけでは、オフライン(店舗)接客には勝てません。いかにオフライン接客に体験を近づけるかが今後の接客市場において鍵となってくるのかもしれません。