ポストクッキー時代における顧客体験価値の重要性、チャットコマースで加速させる明光ネットワークジャパンの「ファン・イノベーション」 | 株式会社ZEALS

ポストクッキー時代における顧客体験価値の重要性、チャットコマースで加速させる明光ネットワークジャパンの「ファン・イノベーション」

Written by zeals recruit | 2022/11/28

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CXを平たく言えば、コモディティ化している個別指導塾の中で明光義塾の価値を上げること。
CX戦略にジールスのチャットコマースが大きく貢献してくれるのではないかと期待を寄せる。

そう語るのは、株式会社明光ネットワークジャパン 執行役員 DX戦略本部長 マーケティング部長 兼 情報システム部長 谷口 康忠様です。同社は、1984年から個別指導塾を開始し、全国に1,700以上の学習塾「明光義塾」を展開しています。マーケティングの観点から、入塾前の生徒/保護者様にいかに明光義塾を理解してもらうかが重要だと語る同社がチャットコマース®️「ジールス」の導入を経て、どのような成果を出しているのか、今後の展望は何なのか。今回は谷口様と 明光義塾事業部 プロモーション部の福島 実咲様にお話を伺いました。
(聞き手:ジールス 執行役員 渡邊 大介、第3事業部 アカウントプランナー  山﨑 哲朗)

FANとFUNの好循環で叶う「DXにおけるファン創出」明光ネットワークの考えるDXとは

本日は、お忙しい中ありがとうございます。明光ネットワークジャパン全社でDXに関する取り組みを昨年から本格化されたと伺っていますが、DXの考え方について最初に伺ってもいいですか?

谷口さん:明光ネットワークジャパン(以下、明光)では、38〜40期(2022年8月期から2024年8月期)の中期経営計画で「ファン・イノベーション(Fun×Fan Innovation)」をコンセプトに掲げています。その中で重点戦略に位置付けられているのが「DXにおけるファン創出」です。

私がジョインさせていただいた当時の1年半前は、“SNSを立ち上げることがDX” ”紙をデジタル化することがDX”など会社全体で軸となるDXの定義が曖昧で、DXの取り組みについてはまだ手探り状態でした。そこで、「データに基づいてデジタルを活用した業務の改革」をDXの定義とし、公募で社内メンバーを集めて取り組みをスタートしました。

渡邊:DXというワードをどうしても大きく構えすぎてしまってなかなか推進されない悩みは、他業界でも多く耳にしました。私自身、自動車業界においてDXを推進するためのポイントについてお話したこともあります。谷口さんは、前職のNTTコミュニケーションズでの知見もある中、どのように推進されてきたのでしょうか。

谷口さん:僕が、会社から求められたことは大きく2つです。①情報システム面でのDX②マーケティング文脈でのDXを強力に推し進めることでした。

情報システム面でのDXにおいて最優先で取り組んだのがシステム基盤の更改です。ERPに位置付けられる事業システムをフルクラウド化し、運用面とセキュリティ面を強化することで、明光義塾事業を安全に継続運用できるシステム基盤を整えました。また、それらのシステムにあるDBを活用し、シームレスかつセキュアにデータを流通させるDXデータプラットフォームを構築することで、データに基づき、デジタルを活用した業務改革に着手しました。

渡邊:1年間でここまで進めるとは、かなりのスピードですね。その時間軸だと、ようやく第一ステップが整うフェーズという企業も多い気がします。加速できた要因はなんだったのでしょうか。

谷口さん:他業種から転職してきて、客観的な視点で課題が見えたこと、社長をはじめトップクラスの理解が早く、組織の重要戦略として位置づけられたこと、何よりも周囲の協力があったことが大きかったです。
着任当初は1人きりのDX推進室でスタートしたのですが、孤軍奮闘のなか、事業部の責任者にヒアリングを進める中で、各事業部にサイロ化されたERP※1のデータをインフラ領域から抜本的に整備する必要性があると感じていました。ただ、整備するだけでは意味がないので、その先のロードマップまで含めて資料を作成し、取締役会で承認を得ました。
そこから、オンプレミス領域のインフラ環境をフルクラウド、サイロ化されたデータをETL※2を使ってデータを抽出・加工して活用できるDXデータプラットフォームの構築まで一気に進めました。それらのデータを活用したアプリケーション戦略のひとつとして展開しているのが明光義塾のアプリ塾生証です。生徒の皆さんにスマホベースのアプリを無料で配布させていただき、入退室の管理やスケジュール連携、連絡業務などをアプリで完結できるようにしました。管理ベースのデジタル化によって、教室長の業務の効率化と生徒/保護者様とのエンゲージメント強化に繋がっています。
※1 Enterprise Resource Planning 企業資源計画の略。企業の経営資源を一元に管理し、企業全体の最適化を実現するための経営手法。
※2 Extract、Transform、Loadの略。組織の内外に散在するデジタルデータを抽出・収集し、用途に応じて変換・加工したうえで、その先にある格納先に有用な情報として配信・送出してくれる、ITプロダクトのカテゴリーの一つ

渡邊:なるほど、生徒の皆さんに新たな体験を提供できたことが冒頭仰っていた「ファン・イノベーション」に繋がっている気がしますが、そもそも「DXにおけるファン創出」にたどり着いた経緯はなんなのでしょうか?一般的には、「自社の生産性や効率化」や「経済的合理性」について議論されていたりすることが多いように感じます。

谷口さん:「“やればできる“の記憶をつくる」というパーパスに基づき、「ファン・マーケティング」という考え方が組織に根付いているからだと思います。明光義塾では、入塾前と入塾後のファンをそれぞれ以下のように定義しています。

FAN(入塾前)
広告やマーケティングの領域が該当し、いかにデジタルで効率的にデータに基づいてファンを創出するか

FUN(入塾後)
明光義塾に通うことで、教室での学習体験をはじめ、明光義塾をいかに楽しんでもらうか
加えて、教室以外でも場所や時間にとらわれず、アプリ等を利用して明光義塾を楽しんでもらうか

FANとFUNが好循環で回ることで、明光義塾のファンが広がっていくだろうという仮説から、「DXにおけるファン創出」を掲げています。

進む、個別指導塾のコモディティ化。差別化の鍵はデータを活用した「顧客体験価値(CX)」の向上とポストクッキー時代に備えたマーケティング

入塾前のFANをいかにつくっていくかが、マーケティング文脈でのDXに大きく関わってくる気がします。こちらはどのように取り組んでいかれたのでしょうか?

谷口さん:明光をまつわる環境を見た時に、学齢期の人口(7〜18才の人口)は総務省の試算より早く減少している一方で、予備校や学習塾の市場は横ばい傾向にあります。また、個別指導塾単体でみると教室数は増えているんです。つまり教育投資は年々増えていることが分かります。

(出典:矢野経済研究所 教育産業市場に関する調査より

谷口さん:明光義塾は1984年から個別指導塾を開始し第一線を走ってきましたが、コモディティ化するこの業界において、新たな差別化ポイントを生み出すことが必要不可欠だと考えています。

マーケティング文脈でのDXにおいて、私たちが最初に取り組んだのは、アトリビューションの可視化でした。MAツール※3を導入し、問い合わせした保護者様がどこのサイトを踏んで入塾に繋がったのかを可視化しました。加えて、ポストクッキー対策です。サードパーティデータの規制が進む中、現在は自社の持つデータ(1stパーティデータ)をMAツールに繋ぎこむ仕組みを構築している最中です。
※3 マーケティングオートメーションツール)とは、ネット広告やキャンペーン管理を自動化するツール

先に述べた、アプリ塾生証を展開してわかったのは「顧客体験価値」を上げることの重要性でした。つまり、CX向上こそが、次のマーケティング戦略に繋がると思ったんです。そのため、現在はDX戦略からCX戦略へフトしています。ここに、ジールスのチャットコマースが大きく貢献してくれるのではないかと期待を寄せているんです。

山﨑:気合いの入るお言葉をありがとうございます。良い機会なのでチャットコマース導入当初の頃から振り返りたいと思うのですが、導入のきっかけは、ポストクッキー対策だったのでしょうか?

福島さん:話は、谷口もまだ転職してきていない約2年前に遡ります。私たちは、サードパーティクッキーの規制によってリマーケティングが使えなくなってくることへの危機感を感じていました。何か新しい施策を探していたところ、紹介を受けたのがジールスのチャットコマースでした。導入の決め手は「完全成果報酬型」であること。成果単価も、リマーケティングで取っていたCPA※4より安く設定してもらえたため、まずは始めてみよう!とスタートしました。

とはいえ、チャットコマースで獲得ができると思っていなかったのが正直な話です(笑)。クーポンや割引、スタンプがもらえるわけでもないのに、入塾・転塾の検討層がLINE公式アカウントの友達になってくれるのか?と半信半疑でした。
※4 Cost Per Action 顧客獲得単価の略。

山﨑:ちなみに導入した時は、リターゲティング広告のCPAは上がっていたのでしょうか?

福島さん:数字として上がってきていましたが、ITP※5やクッキー規制が原因なので”仕方がない”くらいに思っていました。しかし、谷口も参画して去年の9月頃からITPやポストクッキー対策についての議論を真剣に始めました。
※5 Intelligent Tracking Prevention AppleのWebブラウザ「Safari」に搭載されているトラッキング防止機能のこと

谷口さん:打ち手として、MAツールを使って1stパーティデータを活用することは頭にありましたが、もう一つの柱を探していました。GAのパラメータを見て、存在に気付いたのがチャットコマースです。チームメンバーから仕組みを説明してもらい、離脱時のポップアップを見た時「これはポストクッキー対策になりうる!もっと本腰入れてやっていこう」と言いました。そこからデジタルマーケティングにおける重要施策として推進しています。

マーケティングにおけるCXの要は”入塾前の顧客体験”繁忙期に約500件のCVを獲得!チャットコマース経由で入会するユーザー像とは

直近では、繁忙期に約500件/月のCVを獲得できているそうですがその理由はどこにあるのでしょうか?

山﨑:昨夏、一緒に取り組みをしているコミュニケーションデザイナーの巽とLINE公式アカウント内の体験を見直すところから始めました。それが成果に繋がったと思っています。

福島さん:そうですね、前年比での獲得数は、3倍以上の成長を見せました。流入してくるユーザーは検討層(明光義塾への理解度が少ない)なので、最初の診断コンテンツで気軽に回答してもらい、数日間かけて費用感や教室の雰囲気、講師の様子などを無理なくナーチャリングしていくのですが、細部までジールスのシナリオ設計のこだわりが反映されている気がします。

谷口さん:入塾を検討している方に対して明光義塾の良さを伝えたり、生徒/保護者様が抱える課題を直接ヒアリングすることができるコールセンターとは違い、Web上でそういったコミュニケーションを取ることは限界があります。

しかし、チャットコマースは、ナーチャリングができる特長があるので、保護者様のニーズに合わせて情報を届けられることがバーチャルなCXに繋がっていると思います。

山﨑:バーチャルなCX。CXと聞くと、入塾後の話だと定義しがちなのですが、谷口さんや福島さんとお話する中で入塾前のCXの重要性を再確認できた気がします。

谷口さん:”CXの要は教室現場である”という考えはもちろん大事だと思いますが、マーケティングの観点でいうと、入塾前の生徒/保護者様にいかに明光義塾を理解してもらうかが重要です。保護者様が何を求めているか、何に悩んでいるかといった顧客インサイトをチャットコマースによって取れるようになったのは大きいですね。

谷口さん:MQL※6を創出するのがマーケティング、SQL※7化するのがコールセンター、クロージングするのが教室。デジタルマーケティングのKPIとしては、より多くの方から入会のお問い合わせをいただきたいのが前提にあります。

LINE公式アカウントで友だちになってくれるユーザーは、LP※8に訪れた際に離脱してしまった層を指します。離脱したユーザーに対して、クッキーに依存せずリターゲティングを行える施策は代替手段として有効的だと思うし、丁寧にナーチャリングをしていくことで他の流入経路よりも入会まで繋がりやすい実績もあります。
※6 Marketing Qualified Lead マーケティング活動で得た見込み客
※7 Sales Qualified Lead 日々の営業活動で得た見込み客
※8 ランディングページ ユーザーが初めに着地するページのこと

山﨑:先ほど谷口さんも少し触れられていましたが、チャットという特性上、診断コンテンツの回答データも重要なインサイトになると感じていますがその辺りはいかがでしょうか

谷口さん:CXを平たく言えば、コモディティ化している個別指導塾の中で明光義塾の価値を上げることなんです価値を上げるには、生徒/保護者様のインサイトを理解しなければなりません。そのため今年9月にはCX部も発足し、保護者様の声や休会分析、NPS調査※9を開始しました。そこに加えて、LINEの会話(回答)データもぜひ活用していきたいですね。

明光義塾のLINE公式アカウントは11月現在で、約34,000の友だちがいます。チャットコマースで、毎月3,000ずつ増えていくユーザーのデータが取れるってすごいことだと思うんです。満足度調査やNPS調査だと半年に一回の実施ですが、チャットコマースは毎日アンケートしているようなもの。期間は短いけど、顧客接点の密度が高い分、重要なインサイトが眠っていると思います。
※9 Net Promoter Scoreの略 顧客ロイヤルティを測る指標のこと

「売る前のお世辞より、売った後のお世話」エンドユーザー目線で考えるコミュニケーションデザインの重要性

昨今、各社でSaaSサービスの導入も加速しています。導入する際の基準やジールスを選び続けている理由について教えてください

谷口さん:私たちは事業特性上、個人情報をたくさん取り扱っています。そのため、セキュアな状態を維持するためにもクラウドガイドラインを設け、そのチェック項目を全て満たしたものが導入できる仕組みを設けています。新興企業のサービス提供価値はどんどん上がってきているので比較もしますし、資金調達の状況などを確認することもあります。

福島さん:チャットコマースの話で言うと、同業のサービスを提供されている企業も増えてきました。それでも、ジールスと一緒に取り組みをさせていただく理由は大きく2点あります。1つ目は、提案のスピードと量。明光の戦略に沿ったものだけでなく、私たちが思い付かないようなチャレンジングな提案をいただくことが本当に多いんです。提案の頻度は、週に1〜2回、多い時は3回ほど。上長やチームメンバーと内容を確認するのですが、良い意味で「また来たよ」と社内で声が漏れています(笑)。2つ目は、クリエイティブの質。ユーザー体験を第一に考え、思わず押したくなるようなリッチメニューや画像のクリエイティブを作成していただいています。教育業界に知見のある山﨑さんとチームの皆さんの強い意志を感じることもあり、とても信頼しています。

谷口さん:近江商人が遺した商売の教訓に「売る前のお世辞より、売った後のお世話」という言葉があるのですが、ジールスさんはまさにこれを体現してくれてるなと思います。何より、山﨑さんと巽さんのコンサル力です。

広告ってどのパートナーに頼んでも目的は同じなのですが、プロセスの部分が自分達には見えないんです。ジールスは、クライアントである私たちの奥にいるエンドユーザーのことまで考えてくれています。真剣に考えてくれたものが、クリエイティブにも反映され、実際に結果にも繋がっているところが選び続ける理由です。

「ファン・イノベーション”加速”」全国1,768教室、未来の塾生にチャットコマースを届ける

山﨑:ありがとうございます。提案だけではなく、件数としてお返しできるようになったことが大きかったと思います。サービスを導入して終わりやローンチして終わりというサービスもあると思いますが、運用していくのが我々の強みです。これからもよろしくお願いします。最後にこれから挑戦したいことや期待することがあればお伺いしたいです。

福島さん:チャットコマースは、全国に明光義塾が伝えたいメッセージを届け、入塾に繋げることができる施策だと思っています。地方も都市部も偏りがない施策って実は少ないんです。運用型で、エリアに優劣をつける場合もあります。それが、チャットコマースにはありません。現在、明光義塾は全国1,768の教室がありますが、より多くチャットコマース経由で入塾してくれる生徒さんがいる状態を目指したいですね。

谷口さん:去年は「ファン・イノベーション”始動”」そして、今期は「ファンイノベーション”加速”」です。数多くある個別指導塾の中から明光義塾を選んでもらうには、入塾前の時点から顧客体験を価値あるものにしていかなければなりません。単なるリスティング広告やTVCMでは伝わらないところを、チャットというシナリオでユーザーのインサイトをとりながらコミュニケーションができる点に可能性を感じています。「ファン・イノベーション”加速”」にジールスのチャットコマースは外せないものだと思っています。リターゲティングだけでなく、CPFやCPCなどLINE公式アカウントでできることが現在進行形で広がっているので今後もまだどこもやったことのない挑戦をやっていきましょう。

山﨑:社内では、次なる打ち手を考えるため特別プロジェクトも発足しています。流入してくるユーザーにパーソナライズしたコミュニケーションデザインを今後も提案させていただきます。どうぞよろしくお願いします。