https://zeals.ai/jp/jp/case/blog/aiagent-story-hoosiers/

フージャースが挑む「接客AIエージェント」で創る新しい顧客体験

Written by DaisukeWatanabe | 2025/02/26

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株式会社ZEALSは2024年11月に「ZEALS AI SUMMIT」を開催し、その中で接客AIエージェントプロダクト「ZEALS AI Agent」の提供開始を発表しました。たくさんの反響を頂いている中、いち早く同プロダクトの導入意思決定をしていただいた企業の一つがフージャースコーポレーションです。

今回、接客AIエージェント活用を紹介するウェビナーシリーズの第一弾として、フージャースコーポレーションの接客AIエージェント導入責任者である井上氏に、意思決定のキーとなった点や、導入からこれまでの成果、今後期待することについて余すところなくお聞きしました。

本記事は1月28日開催のウェビナーで、導入後1ヶ月の現在地をお聞きした内容をまとめたレポートとしてお届けします。 

1.急速に進化するAIエージェントとは

世界的潮流と日本国内の温度差

ウェビナー冒頭で市場のトレンドのまとめをZEALS渡邊から説明。昨年から「AIエージェント」という言葉が海外で急速に広まり、日本においても2025年に入り一気にバズワード化している現状を指摘しました。

ZEALS 渡邊 大介(以下、渡邊)
「昨年前半からアメリカでは“AIエージェント”が大きく話題になっていて、セールスフォースを筆頭に様々な企業がAIエージェントソリューションを発表しています。日本でも少し遅れてきた感はありますが、年末から年明けにかけて大手メディアでも取り上げられる機会が増えました。まさに“AIエージェント元年”と呼べるタイミングではないでしょうか」

AIエージェントは、大きく以下の3タイプに整理されることが多いといいます。

  1. ①ロールベースエージェント
    特定の専門業務を代替・支援するAI(たとえばコーディング支援や契約書チェック)
  2. ②カンパニーエージェント(企業の対顧客対応型)
    企業の代表として顧客と対話し、マーケティングや接客を担うAIエージェント
  3. ③パーソナルエージェント
    日常生活の支援やWeb操作の代行など、個人向けに特化したAIエージェント

 

ZEALSが注力するのは、上記2の「カンパニーエージェント」。企業がユーザーとの接点をAI化する事例は、今まではFAQチャットボット程度に留まっていましたが、生成AIの高度化により「単なるFAQだけでなく、より複雑な接客体験を自動化・AI化できる」という期待が高まっています。

企業の“顔”を担う接客AIエージェント

本ウェビナーは、とくに「接客・顧客対応」におけるAIエージェント活用をテーマに進行しました。先にZEALSがリリースした「ZEALS AI Agent」は、LINE上で顧客の自由な質問や疑問に対してAIが自律的に回答し、スムーズに商品紹介や予約誘導まで行う仕組みを提供しています。

渡邊
「GPTなどのLLMを基盤としつつ、顧客の社内に眠るデータや商品情報をAIが参照しながら回答を生成する仕組みを整えています。最近ではブラウザ操作をAIが自動で行う事例も出てきて、会話を超えて実務まで自律的に動く“エージェント”が増えています。日本でも接客AIエージェントが普及しはじめれば、オンライン上の購買体験そのものが大きく変わる可能性があります」

2.フージャース井上氏が語る:「接客AIエージェント」導入の背景と成果

不動産業界における課題とデジタル施策

フージャースは全国各地で分譲マンションや駅前再開発案件を展開する不動産デベロッパーです。従来より広告・集客の方法は「不動産ポータルサイトへの掲載」や「新聞折込・ポスティング」「リスティング広告」などが中心でしたが、デジタル技術の発展に伴い、チャットコマースによるデジタル接客にも取り組んできました。井上氏は以下のように背景を説明します。

フージャースコーポレーション 井上 晃嘉氏(以下、井上氏)
「フージャースは創業から30年ほどなので、不動産の領域においては新興デベロッパーに分類される企業だと思っています。だからこそ商品開発やマーケティングには新しい技術や手法を積極的に取り入れようというカルチャーがあります。とはいえ不動産は“高額商材ゆえに最後は人の接客によるおもてなしが必要”という前提が強い業界なので、デジタルシフトが遅れている面もあります。そんな中で、フージャースではまずはチャットやLINEを使って資料請求やご質問に答えられる体制を整えてきました」

このような経緯から、フージャースはZEALSのチャットコマースソリューションを約2年ほど前から導入。商品紹介や来場予約につなげる顧客体験を作ってきました。今回、そこに“AIエージェント”の機能を追加し「より自由な問い合わせに回答し、有機的な接客体験を提供する」という新たなフェーズへ踏み出したのです。

わずか2週間で導入実装が決まった理由

多くの企業にとってAI導入はセキュリティやコスト、社内稟議などさまざまなハードルが考えられます。にもかかわらずフージャースが短期間で導入を決定し、PRまで行えたのはなぜでしょうか。井上氏は次のように語ります。

井上氏
「今回のAIエージェント機能は、あくまで既存の施策に追加実装するイメージで社内調整を行いました。まずは“今のLINE接客がさらに進化する”と考えれば、社内的にも大きなコストや体制変更が不要だと考えたんです。すでにZEALSさんとは成果を出しており、信頼関係もありましたから、“それならやってみよう”とスムーズに通すことができました」

また、AIに対する社内の懸念については「もちろん発言のリスクやセキュリティをゼロにするのは難しいが、あまりそこだけ強調すると何も始まらない」というスタンスだったとのこと。

井上氏
「不動産は最終的に対面接客が必須とはいえ、DX化をどう進めるかは大きな課題です。そこを一気に大規模改革するよりも、まずはAIエージェントを一部に導入して成果を見ながら拡張していく。そうした“スモールスタート”がいちばん現実的だと思います」

接客AIエージェント導入による初期成果

導入後、フージャースのLINEアカウントでは、自由発話による対話が約10倍ほどに増加。事前データベースに基づいて接客AIエージェントが自動回答し、場合によっては資料請求や来場予約への導線を提示してくれます。

渡邊
「フージャースさんの場合、導入初期の2週間ほどで、接客AIエージェントから直接資料請求に至るケースが数件出ました。絶対数はまだ少ないですが、“AI接客でも成果がゼロではない”ことを早い段階で確認できたのは大きいです」

ただし課題もあり、回答パターンにない質問をされた場合は「現在お答えできません」という返答(フォールバック)が他業種に比べて多めだといいます。これについて井上氏は次のように語りました。

井上氏
「不動産は“駅徒歩何分か”とか“周辺施設”“建物構造”“ペット可否”など、細かい要素が多いんです。しかも同じ物件でも階数や部屋タイプで条件が変わるので、AIエージェントが的確に回答するためのデータ拡充がまだ十分じゃない。ここは今後、ユーザー発話のデータをためてAIに学習させていく過程で精度を高めていきたいですね」

3.接客AIエージェントがもたらす未来と展望

短期的ゴール:接客精度と営業連携の向上

今後フージャースが短期的に目指すのは「フォールバックを減らし、スムーズに来場予約・資料請求へとつなげる」こと。そして、AIとのやり取りを営業担当が事前に把握できるよう連携すれば、店舗やモデルルームでの実接客の効率アップにも期待がかかります。

井上氏
「たとえば『このお客様はローンの不安を強く持っている』『ペット飼育を優先している』と事前にわかれば、営業担当者も提案を絞りやすい。結果的にお客様の満足度も上がるはずなので、その体制を作るためにも今のAIエージェント導入は大きな一歩です」

中長期ビジョン:DXの新たな軸に

さらに長期的には「AIが吸い上げた問い合わせ・発話のデータを基幹システムと連携し、商品開発や顧客管理を高度化する」可能性も見据えています。顧客とのやり取りの履歴が蓄積・解析されれば、将来的に「ユーザーが欲しい情報を先回りして提示する」高度なAI接客が実現するかもしれません。

渡邊
「半年、1年というスパンで見ると、AIエージェントの性能も大きく進化しています。今後はLINEだけでなくWebやアプリなどさまざまなプラットフォームでも高度な対話ができる時代になると思います。フージャースさんのように実運用しながらデータを蓄積していくことで、他社との差別化や大きなイノベーションにつながる可能性は十分ありますね」

 

まとめ

  • ①接客AIエージェントの概要
    海外で先行し日本でも急速に普及しつつある「接客AIエージェント」。生成AIの進化で、より自然な会話と提案が期待される。
  • ②フージャース事例:短期間で導入に踏み切れた理由
    既存のLINE接客に追加機能として導入。大掛かりなコスト増や社内稟議が発生せず、まずはスモールスタートすることで合意を得やすかった。
  • ③初期成果と課題
    対話数が約10倍に増え、資料請求へつながるケースも出始めた。ただ、不動産特有のユーザーニーズが影響するため、回答データを拡充・学習し有効な回答につなげることが当面の課題。
  • ④今後の展望
    短期的には接客精度や営業との連携を高め、来場・購入検討の後押しを強化したい。中長期的にはDXの軸となり、ユーザーデータを活用した顧客体験革新へつなげたい。

不動産業界に限らず、高価・専門性が高い商材ほど「リアル接客が絶対不可欠」と思われがちですが、接客AIエージェントでオンライン上のハードルを下げれば、ユーザーとの接触機会や情報の深度はさらに向上し得ます。

ZEALSとしては、こうした「カンパニーエージェント」の日本市場での普及をリードし、今後も最新の事例を発信していくとのこと。本ウェビナーをはじめ、今後も定期的にイベントや情報共有の場が設けられる予定です。

高額商材や複雑な商品構成でも、徐々に“AI接客”が当たり前になる日はそう遠くないのかもしれません。