「あなたのいちばんに。」福岡銀行のブランドスローガンに基づいた顧客コミュニケーション戦略
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福岡を地盤に九州・沖縄で地元のベストパートナーとしてランキング1位*¹ を誇る、ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)の福岡銀行では、「あなたのいちばんに。」をブランドスローガンにユーザーファーストを軸にした事業戦略を推進しています。
その一環として、福岡銀行ユーザーにとって「ベストな選択」を提案するため、同行ではSNSを通じてユーザーにとってメリットある選択肢を提案する顧客プロモーションの仕組みをZEALS(ジールス)のチャットコマースを活用して構築しました。
この取り組みは、福岡銀行のローン専用LINEアカウントを通じて、福岡銀行ユーザーの個別のニーズを洗い出し、ニーズと用途に応じた最適な金融商品を提案する、新たな顧客体験を創出するものです。
今回、この取り組みの背景とZEALSを活用した仕組みついて、福岡銀行の担当者である三浦氏と、FFGのインハウス代理店として、本取り組みをサポートするiBankマーケティング 小嶋氏に加え、カードローンのプロモーションをサポートする広告代理店に同席いただいた上でお話をうかがいました。
コロナ後にローン需要が増加
福岡を中心に九州全域で地銀として地元ユーザーをメインユーザーとする福岡銀行では、2010年代にデジタルシフトを図り、Webを販売チャネルとする金融商品の拡大に力を入れてきました。Web完結型の商品等の整備が進む一方でWeb経由のユーザーの顧客化については余白があると感じた同行は、2010年代後半に拡販施策をデジタルプロモーションに大きくシフトします。
「当時からデジタルプロモーションをサポートいただいている代理店の担当者に要件を話したところ、機能面と期待できる効果の両軸でZEALSが合致する可能性が高いとのご提案をいただきました。」(福岡銀行営業統括部 三浦氏)
福岡銀行では収益の柱と位置付けるカードローン、フリーローン共に一定のニーズがありつつも差別化やユーザーニーズの喚起が課題と感じていたといいます。
「一般的に景気が良いと消費用途のカードローンの需要が増え、支出控えの時にはローンのおまとめを目的としたフリーローンの需要が増える傾向があります。コロナ後の景気回復でローン需要が堅調な伸びを見せていました。」(iBankマーケティング 小嶋氏)
こうした市場背景もありデジタル戦略については好調に推移していたものの、商品ページ(LP)から一定数の離脱があり、そういった層が他の地銀や専業企業(消費者金融など)に流出してしまうことを同社としては懸念していました。そこで、パートナーの代理店が提案をしたのが、対話型コミュニケーションでユーザーの潜在ニーズを探ることを可能にするZEALSのチャットコマースでした。
地域ユーザーの「いちばんに。」なるための差別化
福岡銀行ではこれまで、Webサイト訪問したユーザーは能動的にローン商品の違いについて問い合わせをする必要がありました。そのため、ニーズを認識しながらも蓋然性が低いユーザーがいたとしても適切なオファーをできていなかった可能性があり、同行ではそうしたユーザーをきちんと醸成することが課題でした。
同時に、デジタル戦略において福岡銀行が要件としたのは、企業として大事にしているユーザーファーストのブランドスローガンにも合致することでした。
「福岡銀行は、”あなたのいちばんに。”をスローガンに掲げています。つまりお客さまにとってより良いものを”押し付けるのではなく” ”選んでもらいたい”と言うことなんです。ですから、お客さまとの対話で一番ニーズに合致するものを選んでもらうことができるのはブランドスローガンにマッチする大事なポイントでした。」(三浦氏)
ZEALSが提供するチャットコマースは、Webサイトで意思決定をできずに離脱するユーザーに対し、LINEなどのSNSへ誘導し会話の中でユーザーのニーズを拾い上げながら適切なオファーを展開します。LINE上の会話の中でユーザーにとって必要な情報を提供し、納得感を醸成することが可能なため、不要な情報でユーザーの体験を損ねるということを回避できます。また、ニーズに応じた情報の提供を行うことで、意思決定が先延ばしにされずにダイレクトになされるという利点があります。
LINE友だち追加後のヒアリングで判明したフリーローンのニーズは50%超
FFGでは、消費性ローン*² のほとんどがWeb経由のお申し込みであり、個人向けサービスにおける収益の柱となっています。
なかでも、カードローンはお問い合わせが非常に多い商品であるため、チャットコマースを通じたお申し込みもカードローンが多くなることを想定していたところ、実際にお客さまのニーズを深掘りするとおまとめの需要が高く、実はフリーローンの方がニーズに合致すると言うケースが多くあることがわかったといいます。
「カードローンを検討するためにWebを訪れた方が離脱をして申込みや問い合わせに至らないケースが一定数ありました。今回のZEALSとの施策ではこうした離脱ユーザーから真のニーズを拾い上げ、カードローンをご案内するのが適切なユーザーにはカードローンを、フリーローンをご案内するのが適切なユーザーにはフリーローンをおすすめすることで、問い合わせや申込みの件数が引き上げられました。」(小嶋氏)
「さらに、カードローンは他行や専業(消費者金融など)を含め選択肢が多いことから比較されることが多く、Webだと申し込みに繋がりにくい傾向があります。今回の施策を実施したことで、潜在的なフリーローンのニーズが実に50%以上もあったことがわかったのは大きな成果でした。」(三浦氏)
図2のグラフからもわかるとおり、チャットコマースを活用し、LINEで友だち追加後の対話から借入目的をヒアリングすると、52%ものユーザーがフリーローンが適切と思われる「借り換え・おまとめ」のニーズがありました。
つまり、ローン商品それぞれの特性を理解してもらうこと、そうしたタッチポイントを作ることでこうした隠れたニーズを拾い上げることができたと言えます。
今後ZEALSに期待すること
「現在までにLINEの友だち数も3,700*³を超えています。実際にローン申込数が増加していることからも、今回の施策がローン獲得に寄与した一つの目安と考えています。今後はローン商品にとどまらず、クロスセルができるような機能があればいいなと期待しています。お客さまがご自身では気づいていないさまざまな商品のニーズを引き出せるようになると、よりお役に立てるのではないかと思っています。」(三浦氏)
「新NISAの開始により地方銀行で資産運用を検討されるお客さま が増えていますが、特に初心者のお客さまは投資商品に対する漠然とした不安を持たれているケースも多いです。資産運用における悩みやニーズもより複雑化していますので、1人ひとり異なる 課題やニーズに応えるコミュニケーションを非対面で設計していけたらと思います。」(小嶋氏)
<脚注> *1 帝国データバンク福岡支店がまとめた九州・沖縄のメインバンク企業数(2024年4月時点)による *2 カードローンやフリーローン、マイカーローン、教育ローン等無担保の個人ローン *3 2024年9月13日時点