ゼロパーティデータとはなにか?ポストクッキー時代に重要視すべき理由と収集方法について
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2022年3月、Forbes誌が「Zero-Party Data Is The New Oil」という記事を発表しました。これをきっかけに、世界のマーケターは「ゼロパーティデータ」という言葉に注目し始めています。「ゼロパーティデータ」はGDPRやITPなど、プライバシー保護等の動きが強くなっていく中で非常に重要なキーワードとなってきており、今後もその重要性はより高まっていくことが見込まれています。本記事では、「ゼロパーティデータ」とは何なのか、なぜ重要なのかなどを詳しく解説します。
■ファーストパーティデータの定義と重要性
ゼロパーティデータの重要性を語るためにも、まずはポストクッキー時代の「現在の主役」ともいえるファーストパーティデータというデータタイプから見ていきましょう。
ファーストパーティデータとは、「第三者を経由せずに企業が取得する顧客データのこと」を指します。ファーストーパーティデータはその取得方法がオンラインかオフラインなのかは関係なく、具体的には以下のようなデータ群が該当します。
・自社顧客の購買履歴
・自社サイトの行動履歴や問い合わせ情報
・展示会での取得した名刺データなどの顧客情報
第三者を介さない情報群であると同時に、その出所や調査方法が明確であるためデータの信憑性が高く、また昨今の3rd Party Cookie規制の流れからもファーストパーティデータの重要性は昨今高まりを見せていました。
■ファーストパーティデータの課題とゼロパーティデータの台頭
このような背景もあり、ファーストパーティデータを扱うためのCDP(カスタマーデータプラットフォーム)などのツールが昨今市民権を得始めていますが、ファーストパーティデータもまた完全なデータとはいえません。
ファーストパーティデータの多くがユーザーのパーミッションを取得しておらず、一部プラットフォームからはサードパーティデータと同じように規制され始めています。また行動データや静的なデータも含むため、それだけで顧客理解を深めることも難易度が高いと言えます。
この「パーミッション」と「インサイト」の側面における課題こそが、ゼロパーティデータが必要とされる背景にもなっているのです。
それではゼロパーティデータの解説に入っていきましょう。ゼロパーティデータとはForresterResearch社によって提唱された概念で、その定義は以下のようになされています。
<Forrester Research社の定義>
・ゼロパーティデータとは、ユーザーが意図的・積極的に企業と共有するデータであること
・ゼロパーティデータには、メールプリファレンス※1のデータ、購入意思、個人的背景、ユーザーが企業に『自分』をどのように認識してほしいかなどが含まれていること
この定義から重要なポイントを抜粋すると、「ユーザーが意図的・積極的に(=パーミッションを企業が得た状態)」という点と、「購入意思、個人的背景、ユーザーが企業に『自分』をどのように認識してほしいか(=ユーザーインサイト)」の2点になります。
この観点からゼロパーティデータを我々なりに定義し直すと、
ゼロパーティデータは「ユーザーが自らの意思で、インサイトデータを企業に提供する」
となり、ファーストパーティデータの欠点を補う、補完的関係にあるデータであるためその重要性が高まっているのです。
■データ活用におけるパーミッションの重要性
冒頭にも記載した通り、ユーザーのプライバシー保護の意識が高まってきている状況下では、「自らの意思に基づいた、企業へのインサイトデータの提供有無」が非常に重要となります。「思わぬところで個人情報を利用されていた」とユーザーが感じてしまうこと自体が、企業にとって大きなダメージとなり得ることは想像に難くありません。
生活者起点のリサーチ&マーケティング支援を行なうネオマーケティングが実施した調査結果によると、「不快」「質の悪い(自分に不要な)広告が出てくる」というマイナスな印象を抱いているユーザーは全体の40%~50%を占め(黄色枠内)、「便利」「購買意欲が高まる」などのプラスイメージを持ったユーザーは8.5%にとどまっています。※2
「自分に必要な広告が出てきていない」「不快な広告が出てくる」といった調査結果からも分かるように、ユーザー自身は提供しているつもりのないデータでターゲティングをされることは、既存ユーザーの離反だけではなく、潜在層のユーザーの心象を悪化させてしまう可能性があるのです。
この観点からサードパーティデータは規制の対象になっているわけですが、パーミッションを取得していないファーストパーティデータ(だけ)の活用にも同様のリスクが発生する可能性があります。
このような状況を鑑みると、企業はユーザーと信頼関係を築くことが第一であり、この観点において「ユーザーが自らの意思で提供したインサイトデータ=ゼロパーティデータ」が非常に重要であることが分かります。
また、ゼロパーティデータは、ユーザーから直接提供されるインサイトデータであるため、データの精度が高くなることも特徴として挙げられます。
ユーザーから提供された精度が高いデータを利用することにより、よりパーソナライズされたユーザー体験を提供できます。ユーザーから提供されたデータは企業側が推測したデータではないため、これまでのように不確定な「ユーザーの意図」を元にユーザー体験を設計する必要がなくなります。
そして、ユーザーひとりひとりにパーソナライズされることで、「不信感を抱く」などのマイナスイメージも薄れ、LTV(Life Time Value)の向上やエンゲージメント率向上にも繋がるでしょう。
■価値の高いデータにはリスクもある
ここまで、ゼロパーティデータはプライバシー保護の意識が強くなる中で非常に重要なものであることを述べてきましたが、ゼロパーティデータを扱うということはユーザーから直接提供された貴重なインサイトデータを取り扱う、ということになります。
そのため、提供されたデータに対してはコンテンツのパーソナライズ、適切なレコメンドなどを行う必要があります。このようなアクションを行わない場合、ユーザー側の目線では「データを提供したが、自分にとって良い情報は得られなかった」というマイナスの体験を生んでしまうだけではなく、企業としての信頼を失う可能性も大いにあります。
■ゼロパーティデータを収集する最適な方法
最後に、ゼロパーティデータを収集することに最も適切な手法について説明します。ゼロパーティデータはこれまで述べてきた通り、ユーザーが自らの意思で、インサイトデータを企業に提供することを指します。ゼロパーティデータの取得方法ではアンケートが一般的であり、ユーザーの意思で提供したデータとなりますが、より有益なゼロパーティデータの取得方法は「チャットコマース」※3であると考えています。
チャットコマースとは「LINEやInstagramなどのチャットアプリケーションとチャットボットを組み合わせることで接客体験をデジタル化し、ウェブマーケティングの各種KPIの達成をサポートするもの」と我々は定義しており、世界的にも注目を集めている分野です。
ユーザーのインサイトデータの取得方法の一つにアンケート収集がありますが、デジタル化されたチャットコマースの接客体験はアンケートのUI/UXより優れているため、高い回答率が得られることは以下の数値からも証明されています。
一般的なアンケートの回答率は5%~30%※4の範囲内とされていますが、チャットコマースで企業とやり取りをしたことがあるユーザーは、EUで67%、USでは52%※5にも及びます。このように、チャットコマースでの回答率は、アンケート回答率を30%と仮定しても非常に高いという結果が得られています。
また、一般的なアンケートはユーザーが記載をして企業へ情報提供する、という一方通行の流れですが、チャットコマースではユーザーが提供した情報に対して最適化した返答が可能であるため、「双方向でのコミュニケーション」が成り立っている感覚が強くなります。
このように、双方向のコミュニケーションが可能、かつひとりひとりのユーザーにカスタマイズされたコンテンツを作成可能であるチャットコマースは、ゼロパーティデータ収集に最適であり、かつユーザー体験も高くなることが見込まれます。個人情報保護の流れが非常に強くなっている昨今、鍵を握るのは間違いなくゼロパーティデータになっていくでしょう。
本記事をご覧いただいた上で、自社の製品やマーケティング活動において、ゼロパーティデータを活用すべき部分などのご参考となれば幸いです。
※1メールマガジンの購読や配信停止を管理するフォームのこと
※2 参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000244.000003149.html 有効回答数:1,000名 調査実施日:2021年10月18日(月)~2021年10月20日(水)
※3 チャットコマース:Conversational Commerceや会話型広告なども含む
※4 参考:https://www.smartsurvey.co.uk/blog/what-is-a-good-survey-response-rat
※5 参考:https://www.agilitypr.com/pr-news/public-relations/conversational-commerce-83-of-consumers-say-they-would-buy-products-via-brand-messaging/