成功するDXと失敗するDXの違いとは?
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DX(デジタルトランスフォーメーション)は、単なるビジネスワードではなく、政府も取り組みを推奨している大きな変革です。DXによって、売上の増加や、新たなビジネスモデルが生まれるなどのメリットがあり、その重要性は世界中で注目されています。
また、新型コロナウイルスの感染拡大により、企業は迅速な対応と今後の長期戦に向けた対策を迫られている訳ですが、ほとんどの企業が志半ばにして失敗して頓挫してしまっているのです。そこで今回は、企業がDXに失敗してしまう理由と、成功するためのポイントを解説していきます。
目次
なぜ今DXなのか
経営者層やマーケターから注目を集める「DX(デジタルトランスフォーメーション)」ですが、ではなぜ、今DXが注目を集めているのでしょうか。以下で解説していきます。
まず、2018年に経済産業省が出した「DXレポート」で“2025年の崖”というテーマを発表をきっかけに、多くの経営者が危機感を高めるようになりました。
出典:https://www.meti.go.jp/press/2018/09/20180907010/20180907010-1.pdf
このレポートによると、「既存システムが過剰なカスタマイズにより複雑化・ブラックボックス化しているため、既存システムの問題を解決しいかに経営改革をするかが課題となっている。この課題を克服できない場合、DXが実現できないだけでなく、2025年以降、最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性(2025年の崖)がある。」とのことです。
そしてさらにDXの波を加速させたのが、2020年の新型コロナウイルス感染拡大です。緊急事態宣言に外出自粛、そして解除された今も尚、外出せずに用事を済ませることに対しての抵抗がなくなり、デジタル化の需要が増加、その結果世界中のあらゆる体験がオフラインからオンラインへシフトしようとしています。企業は迅速な対応と準備を迫られているのです。
日本企業におけるDXの推進状況(出典:日経BP総合研究所イノベーションICTラボ『DXサーベイ』)
https://www.nikkeibp.co.jp/atcl/newsrelease/corp/20191125/
しかし、上記の調査によると、DXを「全く推進していない」企業は、60%以上とも出ています。日本は現状、先進諸国と比べてDXの取り組みが遅れているとも言われているのです。
では、なぜ日本企業が遅れを取っているのか。DXの推進にはスピード感が求められていますが、日本企業の多くは高度成長期の常識や資産を大きく転換することなく過ごしてきました。そのため、当時の古いシステムを背負ったまま大きな変革を起こさなければならず、技術的負債が日本におけるDXのスピードを遅らせてしまったのです。
コロナウイルスの影響により、ますますDXの波は押し寄せてくることは確かです。スピード感を以ってDXを進めていくには、企業、業種、役職を問わず、すべての人がDXを自分ごととして捉える必要があります。
DXが失敗する理由
DXを推進する企業が増えていく一方、必ずしもDXが順風満帆に進んでいるとは限りません。ここではまず、DXに失敗する原因として考えられる原因を整理しました。
①組織単位で動いていない
社内でDXを推進するにあたり、“DX推進部”などの部署を作り、そこに人をアサインして満足という企業が見受けられます。しかし、DXを推進するためには組織単位で動かなければなりません。なぜならDXは企業にとって大きな変革であるため、経営層や推進部だけでなく、全社的に大きく影響するからです。
また、DXに留まらず大きな変革をする際には“現状を変えたくない”という一定の反発が生まれます。となると、そういった人材にもいかにDXを受け入れてもらい、対応してもらうかというマネジメントも必要となってきます。
DXの推進には組織の編成から見直しを行い、現場レベルで企業のビジョンを伝えること、そして現場社員からも納得と理解を得ないとその企業のDXは失敗に終わるでしょう。
②ツールを導入しただけ
失敗するDXのケースとして多く挙がるのが、業務プロセスをデジタル化するツールを導入しただけという例です。DXを検討していく上で、新たなツールやシステムの導入を検討することがあるかと思います。しかし、注意しなければならないのは、ツール導入はあくまでも「手段」に過ぎないということです。DXのゴールは、デジタル化によって経営層が描くビジョンを実現させることであり、単なるデジタル化よりももっと大きな変革です。人件費やコスト削減だけは、DXが成功したとは言えません。ツールやシステムを導入することで、企業の何をどのように変革したいかという明確なビジョンを持ち、社内外へ発信するためにはまず、何のためにDXを実現したいか、その目的を考える必要があります。その上で、計画を立ててDXを推進させていく仕組みから作っていくことが肝要です。
③レガシーシステムからの移行がスムーズでない
多くの企業では、社内に複数のシステムが存在しています。いざシステムを新しくしようとしても、元々あった古いシステムとの連携に時間がかかってしまうのです。例えば、みずほ銀行では、「IT投資」を目的に3行(第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行)のシステムを統合するという大規模なシステム改修が行われました。しかし、システム開発に難航し、2012年に開始したプロジェクトはおよそ7年後の2019年に完了しました。その時も、多くのステークホルダーがあったこと、また古い言語を使ったシステムを全て書き直したことなどが大きな要因として考えられています。
革新を起こそうとしても、レガシーシステムがある企業は時間も費用もかかり、失敗に終わってしまうケースも多いのが現状なのです。
DX成功のポイントとは
①目的・ビジョンを明確にする
DX成功のポイント1つ目は、目的・企業ビジョンを明確にすることです。なぜ自社がDXをしようとしているのか議論が熟さないまま具体策を決めようとしたり、どんな手法を導入するのかなどに気を取られたりしていると、最新のツールだけ導入して、明確なゴールにたどり着けないままとなり、DXが滞ることになりかねません。
DXの目的を決める時に、5W1Hの考え方があります。「いつからいつまでに達成するか期限を決める(When)」、「DXによってどこを目指すのか(Where)」、「DX推進のために誰が動くべきか(What)」、「なぜ実現したいのか(Why)」という目的を明確にした上で、「何をするのか(What)」を考えます。そして最後に、「どのように実現するのか(How)」という具体的な手段を考えていくのです。5W1Hをそれぞれ明確にすることで、企業の目的やビジョンは自然に見えてきます。
②組織体制を整える
DX成功のポイント2つ目は、組織体制を整えることです。しかしそれは、DX推進部を設置して人をアサインすることではありません。目的や経営ビジョンを明確にした上で、企業全体でDXに対して取り組める組織体制を組むことがDX成功への近道です。DXを本格的に初めて行こうとすると、その後の周知や支援、他部署との連携や協力が必要不可欠です。また、DXに終わりはありません。そもそもに企業の根幹から変えていく必要があるため、文化や風土、制度、人材など多岐にわたる変革が求められるため、組織体制から考え直す必要があります。
③データドリブンなアプローチ
DXにおける成功のポイント3つ目は、「データドリブン(Data Driven)」なアプローチです。データドリブンとは、ものごとをビッグデータとアルゴリズムによって分析、データ化し、その結果をもとに経営的な意思決定や課題解決を行える状態のことです。
データドリブンなアプローチを行うことで、経験や勘に頼るだけでなく、確かな根拠の元、DXを推進していくことができるのです。DXは既存のシステムなどを一新するなど、企業にとっては大きな変革となります。そのため、DXの成功には、市場の動きや、ユーザーの価値観をできるだけ正確に捉えることが必要となってくるでしょう。
まとめ
新型コロナウイルスの感染拡大以降、ますます加速するDXの波。あらゆる市場において大きな変革が求められています。しかし日本はまだまだ課題が多く、世界でも遅れを取っているのが現状です。今後、DXによるビジネスの革新は避けて通れません。早い段階で目的を明確にし、組織体制を整え、収集したデータを正しく活用することがDXを成功に導く鍵となるでしょう。