今からでも間に合う!DXの進め方
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昨今様々なメディアで取り上げられている「DX(デジタルトランスフォーメーション)」ですが、これに取り組んでいくにあたって必要な情報はまだまだ少ないというのが現状です。本稿では、単にツールを導入するだけでは推進していくことのできないDXの始め方についてまとめました。
DX (デジタルトランスフォーメーション)とは
はじめに、今一度「DXとは何ぞや」というところの認識を擦り合わせましょう。
企業にDXの推進を推奨している経済産業省では、DXのことを
❝企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること❞
と定義しています。
引用元:「DX 推進指標」とそのガイダンス 令和元年7月 経済産業省
つまりDXとは、
「企業がデジタル化を推進していくことで競争に強くなり、産業が発展を遂げていくこと」
を指してい呼称しているわけですが、実際にDXに取り組んだ企業の中で、目標以上に成果を出せた企業は実に5%であると言われています。
DXを思った通りに進めていくことは難易度が高いように思えますが、これは正しくDXを進めていくために必要な準備を怠っている、もしくはDXを推進することで得たい恩恵を把握していないことから引き起こされている企業が多いところに原因があるのでかもしれません。
実際デジタル化とひと口に言っても何から始めたものやら、なかなか判断しかねる方が多いのではないでしょうか。
では、具体的に何をどのようにデジタル化していくことで競争力が上がるのでしょうか。
また、なぜ今DXの推進が叫ばれているのでしょうか。
アフターコロナにおける企業の関心
ご存知の通り、コロナ禍の影響で、およそ8割の企業の売上に甚大な被害がもたらされました。しかしその一方で売上にブーストのかかった企業もあります。
では、その2割の企業は何をやったのかというと、「来店させずに商品を売る」という販路を持っていた、もしくは急造したことで売上を獲得していきました。
これは飲食店が宅配をはじめて業績が上がったことを見れば簡単にお分かりいただけるかと思います。
ではこれは一種のバブル経済のようなもので、新型コロナウィルスの脅威が過ぎ去れば経済は元に戻るのかというと、おそらく戻ることはありません。
何故なら消費者は接触を避けるためにオンラインショッピングであったり食品の宅配であったりを活発に利用するようになったことで、その利便性を知ったからです。
アフターコロナの世界とは、つまり「消費者が動かずに商品やサービスの購買を行うことを知った後の世界」と言い換えることもできます。
家にいながらなんでもできるのであれば、わざわざ外に出なくても済むわけですね。では、そんな消費者を相手に商売をする企業はどんなことに関心を向けているのかといえば、「オンライン化、デジタル化によって売上を伸ばしていくこと」です。つまり、これがそのまま今DXが注目されている理由になります。
DXの始め方
多くの企業がDXに関心を示している、もしくはすでに動き始めている中で、これからDXを初めていくにはまず何をするべきなのでしょうか。
まずはDXがもたらすメリットについて知り、目的を設計することが大事です。
企業が関心を抱くDXのメリットとは、大まかに4つあります。
・利便性
・販路の拡大
・購買率の上昇
・継続的な利用者の獲得
それぞれについて説明していきます。
DXのもたらす利便性とは、「出かける必要がない」「支払いのために待つ必要がない、並ぶ必要がない」といった要素です。オフラインでは決して得られないこの利便性という価値を磨くことで、オフラインな体験と比べて、100%価値のあるDXを進めていくことができます。
DXにおける販路の拡大とは、オフラインの店舗で購買する以外の選択肢として、オンラインショッピングを可能にすることで、誰にでも商品を売れる状況を作り出すことです。
購買率の上昇については、基本的にはオフラインと同じ考え方なのですが、オンラインショッピングであれば、その商品に興味を持ったユーザーの何%が購買するに至ったのかを高い精度で知ることができ、その数値が低ければ改善に向けてPDCAを回すことができます。
継続的な利用者の獲得とは、いかに「ファン」を作るかということです。同一ユーザーが何度も繰り返し利用してくれることで、継続的に収益を上げ続けることに繋がるため、これも極めて重要な要素であると言えるでしょう。
もちろん業種が変われば恩恵にも差異や広がりが出てきますが、基本的にこれらの恩恵は、ほとんど業種に関係なく受けられるものであると言っていいでしょう。
これらのメリットを知っておくことで、DXをはじめる際に目指す目標にブレが無くなります。現状(オフライン)よりも絶対に便利で良いものであるという確信を持つことで、数値計画も立てやすくなり、KGI、KPIを追いやすくなるのではないでしょうか。
実際にDXを導入した企業から学ぶ
DXをはじめるにあたって大事なポイントを押さえたところで、実際にDXを推進することで大きく成長した企業の有名な事例を見てみましょう。
NETFLIXは、最初は単なるWebサイトによるレンタルビデオサービスでした。
レンタルビデオサービスの不便な点として、「見たい作品が届くまでに時間がかかること」「延滞料金が発生すること」など、一般的なレンタルビデオサービスに見られる課題を、デジタル化によって一挙に排除することに成功しています。
そして物理的なディスクを配達することもなく、会員はどこからでもビデオを楽しめるようになりました。会員になりさえすればすぐにビデオを視聴できる、というモデルを構築したことで、今や世界中に販路を広げています。
さらに購買率、この場合はサブスクリプションモデルなのでどちらかと言えば契約率になりますが、会員になることをゴールに置くことで、「会員登録する画面まで遷移したユーザー」がその後登録まで至った/至らなかったを把握し、改善のためには適正な価格を設定し、いかにユーザーが視聴したいものを配信するかを練り・・・といったPDCAを回せる環境を作りました。
あとは言うまでもありませんが、そもそもサービスをサブスクリプション化したことによる継続的な収益、退会ユーザーを減らすための取り組みも同時に行っていくことで、今や時価総額16兆円にまで成長しています。
この事例からも、いかにオンライン、デジタル化を進めることで得られる恩恵について把握しているか、というポイントが肝要であるかお分かりいただけたかと思います。
DXの進め方
では具体的にDXを進めていくには何をどうすればいいのでしょうか。
これまでの解説を踏まえて考えてみましょう。
最初に自社の現在のビジネスモデルが抱えている不便な点を洗い出します。
次に、デジタル化、オンライン化を進めるうえで解決可能であるかを考えます。
デジタル化、オンライン化を進めることによって解決が可能である問題を、なるべく一気に解決できるよう、「点」ではなく「線」で考えます。ここで間違って「点」、つまり局所的なデジタル化を行ったところで他にも問題が残るのであれば、あまり効果は期待できません。あくまで「DXとは線である」と考えましょう。
前後関係が繋がらない、ただのデジタル化によってできるようになることは限られてしまうからです。
これでは単一の問題を解決するための施策に過ぎません。もちろん改善に繋がるのは素晴らしいのですが、あくまでアフターコロナの世界に求められているようなDXは、これまで解説してきたように「デジタル化によって得られるメリット」の全てを得ることでようやく大きな価値を産むものです。
そうして一気通貫したデジタル化を為すことに成功すれば、DXを推進していない企業に大きな差をつけることが可能になっていくでしょう。
まとめ
DXを推進していくために知っておくべき考え方は、まず「現状の課題」「DXを進めていくと解決できる課題」を洗い出すことが何よりも大切であることがお分かりいただけたでしょうか。もちろん他にも進め方はありますし、今後も多種多様なやり方が増えていくことが予想されますが、今からDXを進めていくにあたって、まず知っておくべき基本的な進め方については恐らく変わらないのではないでしょうか。
これからの時代に合わせていくためにも、本稿の基本に順っていただければ、少なくとも間違えることはないと考えています。