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【対談】AIエージェントの核となる「プロンプトエンジニアリング」とは?

Written by | 2025/08/20

近年、AI技術の進化は目覚ましいものがあり、多くの企業が実際にビジネスシーンでのAI導入を進めています。

しかし、そんな中で「どこから始めればよいのか分からない」「そもそも何ができるのか知りたい」といった課題に直面する方も少なくありません。

そこで今回は、まさしくAIエージェントについて日々勉強中の新卒一年目メンバーと、アメリカの大手テクノロジー企業でAIエージェント開発に携わってきたメンバーの対談の場をセットしました。

本対談では、AI導入を検討している企業の方々に向けて、「プロンプトエンジニアリング」の具体的な仕組みから、グローバルな観点から見た「日本のAIエージェント」への期待、そしてZEALSが提供する「接客AIエージェント」の裏側まで、分かりやすく解説します。

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パネラー紹介

Greg Benett (グレック ベネット)
2023年にZEALSに入社、Head of Prompt Engineeringに就任。
ZEALSに参画する前は、SalesforceでConversation Design部門のトップを務め、Agentforceのプロンプトエンジニアリングを主導。
主に対話部分の設計を担当し、100以上の国と地域で利用されるAgentforceのUX戦略をリードした。

小坂 真理乃(Kozaka Marino)
2024年10月にZEALSに新卒入社。
アメリカ・ボストンの大学に正規留学し、アントレプレナーシップ(起業学)とファッションマーケティングを専攻。
大学卒業後、日本ならではの「おもてなし文化」の魅力を世界へ届けたい想いでZEALSに入社することを決意。
現在はセールスチームで「ZEALS AI Agent」や「Omakase.ai」の提案活動に奮闘中。

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「プロンプトエンジニアリング」とは?

Marino:
Gregさん、本日はよろしくお願いします!お話できることを楽しみにしていました。

Greg:
こちらこそ、よろしくお願いします。

Marino:
早速ですが、「プロンプトエンジニアリング」について教えてください!
なんとなくは理解しているつもりですが、いざ自分の言葉で説明しようとすると難しいなと感じています。

Greg:
ありがとうございます。難しいですよね。
プロンプトエンジニアリングとは、大規模言語モデル(LLM)から望ましい出力を引き出すために、入力文(プロンプト)を設計・最適化するプロセスを指します。
生成AIは高性能ではありますが、指示されたことしかできません。そのため、私たちが何を求めているかを明確に伝えなければ、期待とは異なる回答が返ってきてしまうのです。

特に、ZEALSが提供している「ユーザーとの対話でCVを生み出す”接客AIエージェント”」の場合、単なる雑談ではなく、”目的に向かって会話を進める”必要があります。
そのためには、ユーザーの反応を見ながら質問の順序を工夫したり、途中で離脱されないような会話の流れを設計したりと、非常にきめ細かな調整が求められます。

プロンプトエンジニアは、こうした会話体験の裏側をコントロールする存在です。
UX設計、言語学、業務知識、そしてAIの挙動理解——こうした複数の領域を横断しながら、ビジネス成果につながる対話をつくりあげていくのが私の役割です。

 

日本語が今後のAIエージェント発展のカギに

Marino:
なるほど、理解できました!AIと人間の橋渡しのような存在なんですね。
ちなみに、Gregさんはプロンプトエンジニアとして、なぜこのタイミングで日本のスタートアップであるZEALSにジョインしたのでしょうか?

Greg:
最大の理由は、「人間中心のAI体験」に本気で取り組める環境があったからです。
アメリカでは「いかに強力なモデルを速く開発できるか」という側面に重きが置かれ、ビッグテックを中心とした多くの企業が積極的に競争を繰り広げています。
一方で、日本では「テクノロジーをうまく活用して、どう社会に役立てるか」という実践的な思考が根付いているように感じたんです。

もともと私は大学時代に言語学を専攻しており、「人間とコンピューターの対話の実現」をテーマに研究や実務を重ねてきました。
自身のキャリアの中で常に「実践」を重視してきたので、日本のこうした考え方に魅力を感じたんです。

また、日本語を用いた会話体験を深く掘り下げられる機会は世界でも希少で、ZEALSにはその挑戦の余地があったことも、魅力的なポイントでした。

Marino:
素敵な考えですね!
最後の一言が気になったのですが、どうして”日本語”に対して魅力を感じていたのですか?

Greg:
さまざまな言語で使われるAgentforceに携わってきたのでよくわかるのですが、日本語は他の言語と比較して独特な点が多いと感じています。
たとえば、丁寧語や謙譲語があるため、同じ言葉でもさまざまな伝え方が存在します。
また、「空気を読む」という言葉に代表されるように、言葉の裏側に隠された意味を読み取ろうとする文化もありますよね。

Marino:
確かに。私もアメリカ人と英語で話すときと比べて、日本人と日本語で話すときには、伝え方が遠回しになってしまうことが多いです。

Greg:
これはプロンプトエンジニアリングにおいては非常に扱いが難しい側面もあります。しかし、一方で、日本語は「今後の生成AIの表現の自然さを向上させるための最前線」でもあると考えています。

文脈を重視するハイコンテキストなコミュニケーションをAIエージェントに実装できることを証明できれば、そのノウハウは必ずや今後のグローバルスタンダードになっていくでしょう。

Marino:
日本語にそんなポテンシャルがあるんですね!そのような観点は全くなかったです。
実際にZEALSにジョインしてプロダクトに触れる中で、Salesforceとの違いはどのようなところに感じていますか?

Greg:
Salesforceでは、世界中で使用されるプロダクトという特性上、多様な地域や言語に対応できる「柔軟なプロンプトの設計」に注力していました。

ZEALSが提供する「ZEALS AI Agent」や「Omakase.ai」は、ユーザーがAIエージェントとの対話を通じて、その人の悩みやニーズを引き出し、その人に合った商品やサービスをおすすめする、「まるで実際の接客員と会話しているような体験」を生み出すプロダクトです。
私たちはこれを単なるAIエージェントではなく、「接客AIエージェント」と呼んでいます。

これをよりリアルに実現するためには、ブランドや商品の理解から始まり、ユーザー一人ひとりの情報を引き出すためのコミュニケーション、そして日本独特のコミュニケーションスタイルなどを反映したプロンプト設計が必要になります。

ZEALSでは英語と日本語という2言語に特化し、プロンプト自体を完全にバイリンガル化することで、「よりきめ細かな体験を提供できるプロンプトの設計」をしています。

接客AIエージェントのプロンプト設計における、3つの重要な要素

Marino:
とても難しそうですね。具体的にどのようにしてプロンプトを作り上げていくんでしょうか?

Greg:
大きく3つの重要な要素があります。

①カスタマイズ可能なテンプレートの作成

まず、ZEALSには「コミュニケーションデザイナー」と呼ばれる、コミュニケーション設計のプロフェッショナルがいます。彼らは、これまでに400社以上の導入企業様と向き合い、各社のブランドや商品に最適化されたコミュニケーションを設計しています。

しかし、コミュニケーションデザイナーはプロンプトエンジニアの専門家ではありません。そのため、彼らがストレスなくAIエージェントを構築できる仕組みが必要です。

具体的には、必要な情報を入力するだけでオリジナルのAIエージェントにカスタマイズされるような「テンプレートプロンプト」を用意しています。「ブランド名」や「商品の特徴」、「ターゲットユーザー情報」などを入力すれば、その情報をもとに各AIエージェントのプロンプトが自動で生成される仕組みです。

②ユースケースごとのプロンプト設計

お客様(ユーザー)に最適な商品を提案するには、きめ細やかなコミュニケーションが不可欠です。商品に関する説明だけでなく、ユーザーからの質問に答えたり、最適なタイミングで積極的に商品を勧めたりすることも必要になります。

こうしたコミュニケーションはそれぞれ目的が異なるため、AIエージェントに実装する際にはプロンプトを分ける必要があります。そのため、各機能ごとにプロンプトを分割し、それぞれに最適なプロンプトのあり方を日々試行錯誤しています。

③セキュリティと品質担保

AIエージェントが意図しない不適切な発言をしないよう、品質や倫理性の担保も行っています。
たとえば、競合他社の商品を勝手に勧めたり、宗教的・政治的な発言をしたりしないかといった点です。
さまざまな角度から質問を投げかけてAIエージェントと対話し、問題のある発言があればプロンプトを修正し、再テストを実施する。こうした形で日々品質担保に努めています。

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Marino:
なるほど、一口にプロンプトと言っても、さまざまな観点から設計・実装していくことが必要なんですね。
そして、プロンプトは一度作ったら終わりだと思っていたのですが、絶えずアップデートしていくことが必要になるんですね。

Greg:
その通りです。
今、ZEALS AI Agentのプロンプトはバージョン56に達しています。
LLMのモデルがアップデートされて挙動が変わるたびに、効果検証を行い、微調整を加えています。
プロンプトもソフトウェアのように“運用・改善”が前提となる資産なのです。

Marino:
ええ!ver56も!それは知りませんでした。。。
Gregさん、詳しく教えていただきありがとうございます!
「プロンプトエンジニアリング」について少し詳しくなれた気がするので、自信を持ってお客様への提案に活かしていこうと思います。

Greg:
お疲れ様でした。少しでも勉強になったなら幸いです。

Marino:
まだまだGregさんに詳しくお話を聞きたいのですが、そろそろ頭もパンクしてしまいそうなので、まずは私の中で今日のお話をしっかり振り返りたいと思います。
次回は、私たちが普段よく提案している「AIエージェント」について改めて詳しく教えてください!
これもいざ説明しろと言われても難しいですし、「生成AI」などとの違いが厳密にはよくわかっていない気がして…。

Greg:
分かりました。次回は「AIエージェント」について説明しますね!

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ZEALSの接客AIエージェントは、本対談で語られたプロンプトをベースにしています。
これによって、まるで実際の接客員と対話しているようなリアルな会話体験が実現。
気になる方は、ぜひ下のリンクよりデモを試してみてください。

▷ デモの申し込みはこちらから